フィリピンの外交は常に負け試合である。中東諸国は今後フィリピン人労働者を受け入れないかもしれない。
湾岸諸国、フィリピン労働者受け入れ禁止を警告湾岸諸国のサウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、クウェート、カタール、バーレーン、そしてオマーンは、フィリピン政府がフィリピン人労働者に対して雇用者が最低月額400米ドルの給与を支払い期限通りに支払わないと雇用者に1日当たり約13米ドルの罰金を課すとしたことを撤回しない限り、フィリピン人労働者受け入れを拒否するかもしれないと警告した。
これら湾岸諸国の関係機関のリポートによると、海外出稼ぎ労働者の最低賃金引き上げによりフィリピンは同国市民の標準生活レベル向上を目指しているとしている。クウェートの労働相はメディアに対し、「既に関係各国にはこの答申は伝えてあり、各国の意思決定者たちが即時この勧告を実行することを望む」と語り、また「この問題が重大な国際問題であることを認識しており、我々はそれに随時対処していく」としたという。
フィリピン海外雇用庁(POEA)のデータによると、2006年12月の時点でこれら湾岸6か国で雇用しているフィリピン人労働者は、サウジアラビア223,459人、アラブ首長国連邦99,212人、クウェート47,917人、カタール45,795人、バーレーン11,736人、オマーン7,071人で、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールの3か国はフィリピン人海外出稼ぎ労働者の出稼ぎ先国のトップ10に入っている。
このフィリピン海外雇用庁による新しいルールは2006年12月15日に発布され2007年3月1日から施行されたもので、住み込み介護士を含むフィリピン人家政婦などの最低賃金をこれまでの月額200米ドルから400ドルに引き上げるものだ。
またこの法律では、雇用者はフィリピン人労働者に雇用契約に明記された給与支払い日を守ること、そしてそれを怠った場合は遅延1日毎に約13米ドルのペナルティを支払うことを定めた契約書にサインすることを義務づけられている。クウェートのメディアによれば最低賃金についてはいずれの湾岸諸国をも強制するものではないが、雇用者が同意しない場合フィリピン政府は労働者派遣の事務手続きを停止するだろうとしている。
こうしたフィリピン政府の動きに対し、湾岸諸国側からは「フィリピン政府はこの問題を先日の総選挙用の政治的な道具として利用している」という声も上がっており、フィリピン人労働者を受け入れている各国に対する悪評価をもたらしたとも言う。
さて、このニュース記事を読んだフィリピン人たちの感想は...(カタールにいるフィリピン人のためのサイトでのコメントですが、フィリピン現地その他にいる者からのコメントも当然あると思われます。またもちろんフィリピン人以外でもここではコメントできます)
「中東の連中はいつもこんなことばかり言ってるが、フィリピン人労働者が彼の地で排除されたことはない。湾岸にいるhard working Filipinosなしじゃ連中はいられないさ」
「そうかも。しかし10年、20年先のことを考えなければ。我々自身のためにではなく我々の子供たちの将来のために。無関心や現状に甘んじていてはだめだ」
「400ドルもらう権利はある。やっとこうなったね」
「ひどいね。経済的な利益が良識、慎みと基本的な人間性より優先されるの?」
「そう、ひどい。だがこれが中東だ。そしてはっきりしてるのはここはこうなんだということと、我々自らここに来たんだということだ」
「どうやってフィリピン大使館はこれを強制できるんだ? カタール人やバーレーン人の雇用者を裁判所に引っ張っていくのか?」
「同感だ。我々フィリピン人はいつも計画を持たねば。海外出稼ぎ、特に湾岸でのは、一生続けられることではない」
「ちゃんと払わないアラブ人なんかやっちまえ。それがオレ様の言うところの[自分で落とし前をつける]だ。精神的奴隷から自身を解放せよ。誰でもない、自身だけがそれをできる」
「POEA万歳。他の国が同じことをしたら? フィリピン政府がフィリピン人を大事にするように、どの国だってその国の人間が大事なんだ。他の国だってフィリピン人労働者受け入れを禁止するかもしれない」
などなどなどなど。多すぎてここでは紹介しきれません。
以前にもフィリピンは台湾やシンガポールなどとも同様の問題で衝突、あるいは外交問題になったことがあるものの、いずれのケースでもフィリピン側が最終的には折れる形で決着している。(私が知る限りでは)
思いつく例外といえば日比経済協定(JPEPA)の枠組みの中で決まったご存知フィリピン人介護士の話。しかしまだこれは実質的には始まっていないも同様。テレビその他のメディアで紹介される日本で働くフィリピ人介護士の話のほとんどはごく少数の例外を除いて結婚などで元々日本にいたフィリピン人たちである。
こうしてみると、フィリピンの外交というのはほとんどの場合負け試合であり、自国の思うように相手国を説き伏せ勝利することはめったにないといえる。フィリピン政府、そしてフィリピン国民からは「我々は優良労働力を世界に提供している」なのかもしれないが、逆の見方はすれば言うまでもなくこれは自国の経済と庶民生活は他国の思惑でいつでもどうにでもなるということになる。
ニワトリが先かタマゴが先か、窮乏生活に「もうしばらく(世代的な意味での時間)」耐えることを国民に強いても国の経済の底上げを図るか、あるいはこうしたことをいつまでも続けるのか。もちろんこれは彼らフィリピン人たち自身が決めることだろう。
こう言うと必ず本人たちではなく自らを「理解者」とか「支援者」とする連中の一部が、「お前は彼らがどれだけ大変か分かっていないからそういうことが言える」とか言い出しそうだが、日本だって国民の大半が窮乏生活を強いられていた時代があったことを知らないのか、と言いたい。経済大国とか言われて久しい日本だが、いきなり金持ち国になったわけじゃあない。その点は産油国なんかとはまったく違うのだ。
同じ屁理屈で「フィリピン人タレント入国を制限するなんてかわいそうだ」やら言う輩たちは、せっせとアサワモちゃんに送金でもしたらいい、死ぬまで。あるいは別な女が見つかるまで。(笑) あるいは国会議員なり総理大臣にでもなるとか、フィリピンパブ愛好党とかいう政党でも作ったらよろしい。
ということで、今回の話についての私の予想は、「フィリピン政府はやっぱり折れて湾岸諸国の言うとおり、従来と変化なしになる」に20センタボ、です。
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