12、3年ほど前から知る一人のフィリピン人女性から数ヶ月ぶりにメールがきた。彼女は見た目ではまず分からないが日本人の血を母方から継いでいる。知り合った頃はまだ大学生だったのだが、よくある話で妻子ある男に惚れ妊娠。男はそれを知ったあとから冷たくなり、元々チャットで知り合ったこの二人だったがそれ以降チャットでも男はこの子とは話さなくなった。
妊娠したために大学は休学。相当親から怒られたようだが、子供に罪はない、というパターンで家族に支えられながら出産。当時は鼻息も荒く「息子は自分一人でちゃんと育ててみせる!」とよく言っていた。
この子が通っていた大学は実家とは「別な島」にあるのだが、その後その息子を家族に預けて復学し卒業もした。彼女は男兄弟の中でたった一人の娘、それも一番下で親も兄弟たち元々この子の男関係、そして彼氏ではなくても言い寄ってくる男たちにかなり厳しい。電話は取り次がない、門限しかり、破ろうものなら罰として外出禁止になっていたそうだ。しかしそれは大学に入ってからはその別な島で一人暮らし(実際は別な女の子とアパートの一室で同居だったそうだが)を始めれば効力はないに等しい。だからこその不倫と妊娠出産だったのだが。
自分がこの子が妊娠中に実家に電話を掛けたときも、その電話を取った何番目だか知らないが兄貴の一人の声にはフィリピン人らしい愛想の良さは微塵もなく、ただタガログでもその地方の言葉でもなく英語で「日本からのなになにという者だが」という自分にはとりあえず本人に取り次いでくれた。ちなみにこの子とその兄弟たち、日本人の血を継いでいるといっても3世代前に日本から移民してきた先祖がいるというだけで日本語は全員まったく解さない。
彼女は大見得切ったとおり大学卒業後地元州政府に仕事をみつけ、そこで働きながら息子を育ててきた。個人々々能力や境遇環境、そして運も違うだろうがこの意味では彼女は立派である。元々可愛い子(個人の主観でしかないけれど)なので、言い寄る男たちは後を断たないのだが、まだ若いし女の子、好みのタイプの男に言い寄られれば悪い気がするはずもなく、ときどきフラフラはするものの仕事はちゃんと続け最後にはいつも結局「男は信用ならない。自分には息子を育てるのが一番大事」とそうした男連中を振り切る。男は信用ならないと言われると複雑な心境にならないでもないし、それこそまだ若いんだからいい男と巡り会いでもしたら再婚でもすればいいと自分は思うしそうも言っているが、いまだそうした「いい男」には出会っていないらしい。
今回彼女が報せてきたのはマニラにある地方政府を統括監督する役所の募集に応募しテストを受けたあと地元に帰ってきたよ、ということ。緊張で吐いたとか、自分でも受かる気がしない、自信がないと書いてきていた。
おまけに健康診断で結核であるらしいことが発覚、本人いわく母親から感染したのではないかと。そして自分が息子に伝染していないか心配で検査中だという。応募し受験した職が得られた場合、研修で日本に来る可能性が高いそうで、そのためにももし本当に結核感染中なら完治しなければならない。
3人のエックス線技師がそれぞれレントゲン写真を撮ったそうだが、その3人がまた違うことを言うそうでそれにイライラしている。日本その他などではあくまで診断は医師が下すものだと思うのだが、その辺がまたフィリピンらしい。(ま、正直言って好ましいとは思えない) 一人は結核の初期段階と言うそうで、その技師によれば治療薬を2錠服用しなさいと。2人目は空洞性結核(よく分からないが初期段階よりさらに進んでいるということだろう)と診断、毎日治療薬を4錠6ヶ月間服用しなさいと言ったとか。3人目は病変部位認められず、と言うんだそうだ。
どの診断が正しいのか、彼女本人にも判断がつき難く、しかし誤った診断とそれに従った投薬を続ければ副作用も当然あるだろうし健康状態を更に悪化させることになるかもしれない。
しかし彼女は「万が一」のことを考え投薬治療を開始した。副作用があろうが息子のために働けなくなるようなことだけは避けたい、と彼女は言う。ビタミン剤と結核治療薬を服用しているが、副作用だろう嘔吐感に毎日苛まされている今日この頃らしい。
応募受験した先から合格の報せが来るまでは、現職を辞めるわけにはいかない、息子を食べさせなきゃいけないから。
がんばれよ。社会や自分が置かれた境遇に文句ばかりを言うやつが多いなか、そしてそんな状態でもこちらへの気遣いを忘れないお前にもうれしく思うぞ。大したことはできないが遠い日本から自分はいつも応援してるぞ。
- 関連記事
-
スポンサーサイト
コメントを投稿